クラウドとティファはエアリスの墓の前に立っていた。 あの戦いから一体どれだけの歳月が流れたのだろうか。 戦いの中で得た物はあったが、それ以上に失ったものも大きい。 生涯、この人だけと思い、愛した人を失うというのはこんなに辛いことだと初めて知った。 できれば知りたくなかった。だが、今更そんなことを思っても仕方のないことだ。 彼等は生きなくてはならないのだ。 それが彼女が最も望んだことなのだから。 彼等の顔には無数の皺が刻まれていて、それらが長い歳月を物語っていた。 傍らの彼女がそっと花束を置いた時、彼の目からは大粒の涙がほんの一滴、頬を伝い、やがて落ちた。 彼には彼女−エアリスーの幻影でも見えたのだろうか…? 「帰ろうか…」 そう言った時の彼の目はまた、元の通りになっていた。 まるで、さきほどの涙など嘘だったかのように。 ティファが静かに立ち上がると、それと同時に彼はゆっくりと歩き始めた。 すると、ふと立ち止まり振り返ると、とても…とても小さな声でつぶやいた。 そしてまた、何事もなかったかのように歩き出した。 彼の小さなつぶやきは、風の音にかき消されたはずなのに彼女の元にはしっかりと届いていたらしい。 「エアリス。今でもあんたはオレの―心の―中に」と。 晴れ渡った空を見上げると、そこには彼女が静かに笑ってこう言った。 「ありがとう」 たった一言、そう言うと風と共に消えた―。 これ以上に幸せなことなどないというかのような笑みを浮かべて―――――。 |