「ねぇ、クラウド。虹の向こう側って何があると思う?」
午後の日差しが暖かい、そんな昼下がり。
昨日から続いていた雨もようやく上がり、今は太陽が顔を覗かせていた。
窓の外には絵の具をこぼして作ったかのような一面、青色に染まった空、そして虹。
窓辺に座り、まどろんでいたオレに彼女から突然の質問攻撃。
一瞬の沈黙の後、オレの発した言葉は
「はぁ?」
だった。ふいうちされたこともあり、まどろんでいたせいもあり、まだ頭が回転しきっていなかったようだ。
ようやく回り始めた思考回路の中で彼女の言葉を反すうしてみる。
虹の向こう・・・? 虹ってあれだろ? 粒子が光に当たってどうのこうの…。向こうとか言ってるがそれ依然に虹なんて…。ぶつぶつ
「もう! 一人で考えこんでないでちゃんと答えてよ! あ!! まさか、虹の向こうなんてあるわけないとか思ってるの? 思ってる、そうでしょう?! 失礼しちゃうなぁ、もう」
分かってるなら聞かないでくれ。そう思ったが、あえて口にはしなかった。
「あのね、クラウド。現実がどうのとかじゃないんだ。必要なのは夢見る事、想像してみる事、なんだって。私、小さい頃からずっと思ってたの。いつかこのプレートの上に出て、雨上がりの虹を見る事ができたらその向こう側にも行けそうな気がするって。その時は、大切な誰かと一緒に虹の向こう側を探しに行こうって」
彼女はそう言うと窓の外に視線を戻した。
大切な誰かと一緒に、か。
ガラにもなく、それがオレだったらいいななどと都合のいい事を考えてしまった自分に苦笑した。
「私、もしものことだけど、クラウドよりも私の方が先に死んじゃう…なんてことがあったらお願い、聞いてくれる?」
やめてくれ…。そんな悲しい事を言うのは…。
「虹がよく見える場所にたった1本でいいから向日葵を植えて欲しい。できれば私のお墓のすぐ側に」
君がいなくなった世界なんて考えられない。お願いだからそんな事は言わないでくれ。
知らず知らずのうちに涙が溢れていた。
オレの異変を知ってか知らずが、振り返った彼女はとても優しく微笑んだ。
「なんで泣いてるの? これ、もしもの時の話だよ? クラウドってば大袈裟だね。ふふっ。」


「なぁ。どうしてあの時、オレにそんな話をした? こうなる事を知っていたのか? でも、オレ達の旅はまだ終わっちゃいないぜ? 虹の向こう側を見に行くんだろ? 大切な誰かと一緒に。俺じゃ役不足かもしれないが、良かったらお供するぜ? お姫様」
あの時となんら代わりのない午後。
夏の日差しに照らされて輝く大輪の向日葵に彼女の影を見たような気がした。
「役不足なんかじゃないよ」
そう言われた気さえした。
「虹の向こう側…本当、何があるんだろうな? なぁ? エアリス…?」
小高い丘に咲く一輪の向日葵。それに背を向けオレは歩きだした。
虹の向こう側…。その場所にエアリスと辿り着く為に。
そう。オレ達の旅は今、始まったばかりなのだから…。



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